公認会計士のコウです。
私は大学を卒業後、社会人経験を積んだものの思い切って公認会計士試験を受験し、無事公認会計士となることができました。
もっと専門的な知識を身に着けて組織に所属しなくてもつぶしのきく社会人になりたくて公認会計士を目指しました。
同じ会計系の資格として税理士もあるのですが、私は税理士ではなく公認会計士を目指すことにしました。
今回はそんな体験をもとに公認会計士と税理士の違いについて書いていきます。
目次
公認会計士と税理士の定義
公認会計士・税理士はともに専門的な知識を有すると認められた人のことです。
「公認会計士」とは公認会計士法に定められ、公認会計士試験に合格し、実務補修等の要件を満たした人のことです。
「税理士」とは税理士法に定められ、ふたつの税理士になるためにはふたつのルートがあります。
- 税理士試験に合格した人
- 国税局や税務署などの税金に関する業務を一定期間(全ての科目の免除を受けるためには23年間)従事していた人⇒試験を受けることなく、税理士となれる
公認会計士と税理士の違いは「独占業務」
公認会計士と税理士の違いは何?とよく聞かれますが、いちばん簡単な答えは独占業務が違うということです。
独占業務とは資格を有する人しかできない業務のことで、資格を有する専門的な者にのみ業務を実施させることで、業務の質を制度的に担保しているものです。
公認会計士と税理士では独占業務が違う
公認会計士と税理士が独占している業務は次のとおりです。
財務書類の監査または証明
- 税務代行
- 税務書類の作成
- 税務相談
公認会計士の独占業務 財務書類の監査
公認会計士の独占業務とは、企業が作成した財務書類が適正かどうか意見を表明する業務です。
ニュースで粉飾決算の記事を目にすることが最近多いですが、そのような粉飾がなく正しく財務書類が作成されていますよ、と財務書類の適正性を担保することができるのは公認会計だけとなります。
税理士の独占業務
税理士の独占業務は税金の計算や納税手続きの支援ということになります。
税金に関する業務ということで、対象は企業などの法人に限られず、例えば個人の確定申告の作成・納税の支援なども税理士の独占業務となります。
税理士ではなく公認会計を目指した4つの理由
私は公認会計士の資格と仕事に魅力を感じたので税理士ではなく公認会計士を目指しました。
その理由は4つあります。
理由① 公認会計士は税理士の上位資格
公認会計士と税理士はそれぞれ独占業務が異なり仕事の土俵が異なりますが、公認会計士は税理士の上位資格であるといえます。
それは公認会計士試験合格者は税理士にもなれるからです。
- 公認会計士試験に合格し、業務補助期間が2年以上で実務補修を修了した者
- 税理士試験に合格した者
- 税理士試験を免除された者
- 弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)
- 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)
公認会計士になれば税理士にもなれるので、試験時間が確保できる方は公認会計士を目指すほうがよいです。
理由② 公認会計士は会計という大きな視点で企業を見る
公認会計士は会計と監査の専門家です。
会計とは最も身近な事例だと、外食をして食事を終えた後の支払いのときにお会計をする、というような金銭の支払い(お店側からしたら金銭の受領)の記録となります。
これを企業の会計というより大きな視点から見ると、1年間の売上や仕入れ、従業員の給料の支払いなどのすべての取引の記録となります。
公認会計士の独占業務である監査とは、公認会計士が会計の専門家として、企業の1年間の全ての取引の結果である財務書類(貸借対照表や損益計算書など)が正しく作成されているかどうか意見を表明することです。
この全ての取引の中には、税金に関する取引も含みます。税金を納めることも企業の重要な取引の一つです。
税理士の独占業務はこのような大きな会計という枠組みの中の一つの要素である税金に関する業務のみに限られているもので、企業活動全体からするとほんの一部にすぎません。
公認会計士は税金に関する取引を含む企業活動の全ての取引を、会計という大きな視点から捉えることを業務としています。
理由③ 税理士よりも公認会計士の方が試験が難しいから
両社の試験を比較すると公認会計士試験のほうが難易度が高く、合格するのが難しいこととなります。
公認会計士試験と税理士の試験制度自体の難易度の違いもあります。
まずは公認会計士の試験制度を見ていきましょう。
- 短答式試験4科目⇒論文式試験5科目⇒修了考査5科目
- 短答式試験は科目免除なし(全科目合格すれば2年間有効)
- 論文式試験は科目免除あり(2年間有効)
- 就職後に働きながら修了考査に合格しなければならない
①短答式試験⇒論文式試験⇒修了考査の3ステップがあります。すべての試験に合格しないと公認会計士と名乗ることはできません。
②短答式試験は1年に2回。科目数は4科目です。短答式試験は科目免除の制度がなく、4科目すべてに合格しなければ次のステップに進めません。4科目すべてに合格すれば2年間有効です。
③論文式試験は1年に1回。科目数は5科目です。科目合格の制度があり、合格後2年間有効です。
わかりにくい試験制度ですが、端的に言うと
3年以内に論文式試験に合格しないと短答式試験や論文式試験の科目合格がなくなり、また一から受験しなければなりません。
④論文式試験に合格後、監査法人に就職したあとも修了考査が待っています。論文式試験に合格しただけではまだ公認会計士と名乗ることはできません。働きながら実務補修を受け、修了考査に合格して初めて公認会計士と名乗ることができるのです。
公認会計士試験がいかに難しいかお分かりいただけるでしょうか?くわしくはこちらの記事に書いているので見てください。
それに対して、税理士試験は5科目に合格する必要がありますが、科目免除があり、税理士試験の科目免除には期限がありません。
そのため1年に1科目ずつ合格を狙って5年計画で税理士試験合格を目指すこともできます。税理士試験に社会人にとって合格を狙いやすいというのはこのような科目免除の制度があるためです。
理由④ 税理士は試験を受けなくてもなれる
税理士は試験を受験しなくてもなれます。国税局や税務署などの税金に関する業務を一定期間働くと税理士資格を取得できます。
実務的に専門業務に従事することで専門性が身につくことは否定しませんが、税理士資格が実務要件のみで試験勉強という実務と異なる体系的な学習をしなくても取得できる資格ということで、自分としてはかなり魅力に乏しい試験だなと感じました。
理由④ 公認会計士の人数は税理士の半分
公認会計士と税理士は日本に何人ぐらいいるでしょうか。
公認会計士は2019年2月時点で31,199人います。
出典:日本公認会計士協会 https://jicpa.or.jp/about/outline/
税理士は2019年2月時点で77,903人います。
出典:日本税理士会連合会 http://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/enrollment/
このように税理士は公認会計士の倍以上の人数がいます。
ちなみに難関資格として有名な弁護士は2018年3月31日時点で40,066人います。
出典:日本弁護士連合会 https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/statistics/reform/fundamental_statistics.html
このように、公認会計士は受験合格者数が増えてきたとはいえ、資格保有者数が税理士と比較しても少ない状況です。
資格所有者が少ないということは、それだけ希少性があり仕事をしていくうえで過度な競争にさらされることが少なく、安定して仕事を続けられるということです。
まとめ
公認会計士と税理士の違いについて書いてきましたが、それぞれの資格の主要な項目を比較した表を作成してみました。
項目 | 公認会計士 | 税理士 |
根拠法 | 公認会計士法 | 税理士法 |
専門性 | 監査及び会計の専門家 | 税務に関する専門家 |
資格試験 | 必須 | 必須ではない |
独占業務 | 財務書類の監査又は証明 | 税務代行・税務書類の作成・税務相談 |
希少性 | 高い | 低い |
公認会計士と税理士は、あまり実生活とは馴染みがない資格なので、世間的には違いがよく分からないと思います。
それぞれ違う分野の専門家であり、また資格を取得するための難易度も異なります。
これから公認会計士や税理士を目指す方もそうでない方も、この記事で公認会計士と税理士の違いが分かってもらえたらと思います。